みなさんこんにちは!
いよいよ秋本番といったところでしょうか。台風にはくれぐれもご注意くださいませ!!
ちなみに、こちらスウェーデンではすでに夜は氷点下を記録しております…
さて、きょう紹介するのはこちら!
泉鏡花『高野聖』です!!!!!!!!
前回の『外科室』に続けて、小生にとって二作目の泉鏡花作品となります。
「『外科室』で泉鏡花に興味出たのでおすすめおしえて!」とtwitterで聞いてみたところ、一番多くの声を集めたのがこの作品でした。
ひとことで言えば、旅をしている僧が、かつて自身が経験した不思議な美女との旅中の出会いを聞かせてくれるという物語。
修行の身である僧すらも惑わせる美しさの持ち主である魔性の女の秘密とは…?
それでは早速参りましょう!
『高野聖』登場人物、あらすじ、内容
登場人物
私
若狭へと帰郷するところ。道中、見知らぬ僧と道連れの約束ができ、宿を共にすることに。
眠れないので夜が深まるまで僧の旅の話を聞くことに。
僧
高野山の僧です。ここから題名の『高野聖』が来ているということでしょうか。
「私」と向かう先が同じということで、宿を共にすることになります。
そしてこの僧が、かつて経験した魔性の女との出会いについて語り始めます。
薬屋
僧のエピソードの中に登場します。
ふるまいは下品な感じ。
山を越えようとしていた僧はこの男と出会い、馬鹿にするようなセリフを浴びます。
若い。
婦人(おんな)
山奥の孤家にひっそりとすむ、若くてきれいな女性です。
白痴の男と二人で住んでいます。魔性の女。
白痴の男
婦人と一緒に住んでいます。
足が不自由で、言葉も話せなません。お腹が出ている。
親仁(おやじ)
僧が婦人の家にいるとやってきた馬を引いた男。

あらすじ、内容
僧とともに宿で一泊することとなった「私」は、僧の旅の体験を聞かせてもらうこととなります。
以下はその僧のお話。
山を越える前に茶屋に寄った僧は、そこで薬屋と出会います。下品なふるまいの薬屋は、僧をさげすむような発言。
彼をおいて出発した僧でしたが、若い薬屋にすぐ追い抜かれてしまいます。
しばらく行くと道が二つに分かれていました。そこで僧は偶然農民とすれ違い、遠回りながら安全な道を教えてもらいます。
しかし、使われていないほうの道を薬屋が進むのを見ていた僧は、恨んでいるから彼を見殺しにしたと思われるわけにはいかないと彼を追いかけ、連れもどすことに。
しかし、全く追いつけません。道中、大嫌いな蛇に何度も遭遇したり、たくさんのヒルが降ってくる森を抜けたりと散々な目にあいながらもなんとか進んでいきました。
疲れ果てた僧の前に、ようやく人家が。声をかけても返事をしない白痴の男と、奥から出てきた美しい女性と出会います。
つぎの人里ははるか先。そこに泊めてもらうことになります。
ヒルに吸われた僧は、婦人とともに川へおりて水を浴びることになります。
その間に、馬を引いた親仁が留守を守ることに。
川で婦人にからだを流してもらう僧。気づけば婦人は裸に。
花に包まれるような幸福につつまれます。婦人が猿やヒキガエルに付きまとわれたりしながらも、ふたりはもとの孤家に戻ります。
すっかり婦人に惚れてしまった僧。内心では、あの白痴をよくは思っていないのでしょう。「白痴」にはルビで「あほう」や「ばか」とあります。
話すことすらできない白痴の男ですが、謳いだけはできるそう。侮りながらきいていると、あまりの歌の美しさに涙をこぼします。
そして、婦人の真心からの優しさにも。
さて夜になり、寝ることになります。すると蝙蝠や、正体不明の魑魅魍魎たちが家の周りで騒ぎ始めます。
婦人の「お客様が来ているからやめろ」との声も聞こえてきます…
翌日、僧は婦人に残るように誘われ、後ろ髪を引かれる思いをしながらも出発します。
滝のところで引き返そうか悩んでいると、昨日引いていた馬を売って鯉を買ってきた親仁と再会します。
そしてそこで、衝撃の事実が明かされるのです…
なんと婦人は、男を畜生に変えてしまう不思議な能力の持ち主であること。昨日の馬は、あの薬屋が姿を変えられてしまったものであること。そして魑魅魍魎たちも、かつて婦人に惚れてあんな姿になってしまったこと…
さらに婦人の過去も語られます。
かつて医者の娘であった彼女は、触れるだけで病を治したり痛みを和らげたりする不思議な力を持っていました。
その医者へかかった白痴の子が彼女になついたため、退院の日に付き添って家まで送ることに。その日に大雨が降り、むらは全滅。生き残ったのがこの物語に出てくる三人だったというのです…
そして僧は、その正体を知った今ですら、彼女のことを考えてしまうというのです…

『高野聖』感想、考察
ふたつの美しさをあわせもつ魔性の女性の姿
この物語で、修行のみである僧すらも魅惑する婦人。彼女には、ふたつの美しさが介在するように思います。
①白痴の男に対する純粋な慈しみとしての「愛」
②若い男にたいする、純粋な女性としての「愛」
です。
①により、ひとと話すこともなく寂しく山奥で暮らす婦人は、②をますます募らせていきます。そしてその結果、多くの男性を惑わせる魔性の女性として妖艶になっていくのです。
ひとことに美しいといっても、その中にはまるで母親のような愛と、女性としての愛が介在しているのです。
勧善懲悪の小説にありがちな①だけではなく、②としての女性像までも描き切っている。そここそに小生は惹かれたのであります。
おわりに
いかがでしたか。
百年以上にわたって評価され続けている泉鏡花の作品。名作でないはずもなく、小生ごときにすべて理解できるものでもありません。
そんれでも、自分なりに考えたことを書いてみました。
ぜひ、みなさんの感想や読み方を教えてください。
シェアやコメントお待ちしております!それでは!
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