みなさんこんにちは。まだ五月だというのに今日の予想最高気温は30度。お元気でしょうか。
さて、きょう紹介するのはこちら!
ノーベル文学賞を受賞したスウェーデンの巨匠、ラーゲルクヴィスト(Pär Lagerkvist)の作品『巫女』(1956年)です!!
ひとことでいえば、かつてデルフォイの神殿に巫女として仕えていたが、その後街を追われ、山奥に静かに暮らす老婆がその過去、体験、神観を語る物語。
「信仰なき信者」を自称したラーゲルクヴィストが描く、巫女の神との経験…
それでは早速参りましょう!
『巫女』の登場人物やあらすじ、内容は?
登場人物
老婆
デルフォイの街を見下ろす山の中に、白痴の一人息子とふたり、他の人間と一切かかわることなく暮らしています。
かつては有名な巫女であり、神が彼女の口を借りて言葉を発していました。
生まれは貧しく小さな家。
息子
老婆の一人息子。
話すことはなく、ふれあうのは山羊だけ。いつも薄い笑みを浮かべています。
放浪男
死刑囚が家の壁にもたれて休んでいるのを見て、不吉に思った彼がそれをやめるように言うと、
「私を拒んだからには永遠にこの世をさまよい、安らぎを見つけることはない」
と死刑囚から言われます。
まったく気にしていなかった彼ですが、世界が灰をかぶったように見え、妻子に逃げられ、絶望しながらデルフォイまで神のお告げを聞きにやってきます。
しかし神殿では断られ、かつて有名な巫女だった老婆のうわさを聞いて訪います。
片腕の男
若き日の巫女が恋をする相手。戦争で片腕を失いました。
巫女が巫女であることを知りません。

あらすじ、内容
この項の後半はネタバレを含みます
神は本当に善なのか。よそ者に対してはそれ以上ない罰を望む神を問いただす放浪の男の訪問を受けて、老婆は自分の過去を語り始めます。
神殿の下にあるかび臭く息苦しい岩室で自身に神を宿すこと。その瞬間は苦しいが、同時に恍惚を与えてくれること。
彼女にとって神は安全や安息ではなく、心配や不安、軋轢でした。それでも恐れると同時に、恋しがってもいました。
しばらく仕えているうちに、彼女は知ります。神官たちの多くが、神を愛しているのではなく、神殿を愛しているだけであること。
経済的な理由でそうしているだけであり、自分が巫女として選ばれたのも神が望んだからではなく、神官たちが望んだからであること。
そして、母親の死を機にしばらく実家で暮らすうちに片腕の男と出会います。
自分は神のものであるとわかっていながら、神の与えてくれない安心と平安を求めてその男と愛し合います。自分が巫女であると伝えても、捨てられることはありませんでした。
しかし、彼女が彼にしがみつくような目をするようになり、少しずつ距離が生まれます。
ついに二人は別れることとなります。そしてそのとき、巫女は宣託の部屋で神に犯され、男は川で死んでいるのが見つかります。
しかし、彼女のお腹には新しい命が宿っていました。その子を彼の生まれ変わりと信じ、巫女は暮らしていきます。
当然、妊娠はバレます。神殿に集まる人間に対して商売をしてきた街の人々は、その名を貶めたとして彼女を殺そうとまでします。
這う這うの体で神殿から逃げ出し、山の中で彼女は暮らし始めます。お腹の子を生かすため、盗みでもなんでもして生き延びていきました。
そして予想よりずっと遅れた夏の嵐の日、陣痛が訪れます。嵐から身を守る場所などなく途方に暮れていると山羊たちが集まってきて、洞窟へ連れていってくれます。
彼女に乳を与えてくれることもあった彼らに助けられ、子供が生まれます。
しかし生まれたのが不気味な息子であり、計算してみればちょうど神に犯された日に宿った命でありました。
神に人としての幸福を奪われ、一生を利用されたのだ、神は無情であると老婆は語ります。
そこまで語り終えると、息子の姿がありません。老婆は、息子が本来の場所へ帰っていったのだと述べます。
そして、神への憎悪に心を満たす放浪男がその憎しみによって神と結びついていて、ひとの運命はいつも神と結びついているのだと説きます。
神は善でも悪でもあり、苦痛も幸福もくれる存在であり、自分の人生が残酷で豊かであったと語り、冒頭と同じような描写で物語が終わります。
『巫女』の感想は?どうだった?
率直に言うと、よくわからんがおもろかった!!!です(笑)
普段、神を意識することなどそうないぼくは、神の持つ二面性に驚きながら読みました。
白か黒か、はっきりと分けることの出来ない、理解の及ばない存在である神。面白く読めました。
磔にされ、ゴルゴタの丘へむかうイエスと昇天していく老婆の息子。イエスを産んだ処女マリアと、神に犯され息子を産んだ老婆。多くの対比がみられ、そこも面白かったです。
おわりに
いかがでしたか。
ラーゲルクヴィストが残したメモによると、巫女のモデルは著者自身だそうです。「信仰なき信者」である彼の神に対する持論は、以降の作品でさらに展開されていくそう。
ノーベル文学賞をもらうのも納得、読み応え大満足の小説です。是非どうぞ。
シェアやコメントお待ちしております!それでは!
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