イプセン『野鴨』内容と考察 人間は「真実」に耐えうるのか

イプセン

みなさんこんにちは。GWがやってきましたね。いかがお過ごしでしょうか。

ぼくはGWを北欧文学強化週間とすることにしました!そしてきょう紹介するのはこちら!

ノルウェーの劇作家イプセン『野鴨』(原千代海訳)です!!

自然主義作家であり、日本で演じられた数はシェイクスピアについで二位といわれるイプセンの、後期の作品です。

ひとことでいえば、嘘のうえに真の幸せはなりえないと信じる「正義病」の男が、貧しくも幸せに暮らす友人の家庭に「真実」を突き付け、友人を欺瞞の生活から救いだそうとする物語。

人間はどれだけ「真実」に耐えられるのか。書かれてから135年を経てもなお、人間を貫くものを描き出すイプセンの力に驚かされる作品です。

それでは早速参りましょう!

『野鴨』の登場人物やあらすじ、内容は?

登場人物

主人公 グレーゲルス・ヴェルレ

理想が高く、売ぞや偽りの上に幸せな生活はあり得ないと考えています。

そしてそれをひとにおしつけてしまう「正義病」…。

父親嫌い。

豪商ヴェルレ

グレーゲルスの父親。

会社を経営している金持ちです。このところ目が悪くなり、息子に会社の経営に興味がないかと呼び戻したのでした。

かつて、後述のエクダル老人と一緒に山の買い付けを行うが、その際の悪さをすべてエクダル老人に押し付けてしまいました。

ヤルマール・エクダル

グレーゲルスの友人。写真技師です。

ヴェルレの紹介で妻のギーナの出会います。ふたりのあいだにはヘドヴィクという14歳の娘がいます。

また、ヴェルレの支援で自分の写真スタジオを得ます。

写真を科学にするような発明をすることが使命だと信じて没頭中。

彼の家の納屋で、ヴェルレに貰った野鴨を飼っています。

エクダル老人

ヤルマールの父親。もと軍人で、中尉までいきました。

かつてたついた豪商ヴェルレのもとでコピーの仕事をもらっています。

家の納屋でウサギや鳥を飼っていて、そこで狩りをして昔を思い出しています。

あらすじ、内容

ここはネタバレを含みます。ご注意ください。

グレーゲルスはひさびさに父の家に帰り、そこでパーティーに参加します。そこでヤルマールと再会し、かつてヴェルレ家で仕事をしていたギーナという女性と結婚したことを知ります。

しかし、グレーゲルスは、当時生きていた母に聞かされて知っていました。

かつて父が、ギーナに手を出していたことを。

そしてグレーゲルスは、ヤルマールに娘ヘドヴィクがいることも知ります。ヘドヴィクが、遺伝により今後目が悪くなると診断されている(つまり、ヘドヴィクがヴェルレの子である)こと、ヴェルレがそのためにヤルマール家へ施しをしていること…。

ここまで知ったグレーゲルスは、友人のヤルマールを欺瞞の結婚生活から救い、真に幸せな結婚生活を送れるようにと、この「真実」を突き付けます。

グレーゲルスは彼ら夫婦が秘密の過去を乗り越え、幸せな結婚生活が始まるものと信じていましたがそうはならず、ヤルマールは堪り兼ねて家を出ることにしてしまいます。

ヘドヴィクが自分の娘でなく、自分を愛してはいないと感じたヤルマールは娘を愛するのをやめてしまいます。そして、それにたまらずヘドヴィクは、自ら命を絶ってしまうのでした…

『野鴨』の感想は?どうだった?

めちゃくちゃ面白かったです!!

この作品が書かれてもう135年が経ちますが、「正義病」はまだ人間の内部に潜んでいる気がします。

どれだけの時を経ても大して変わらない人間の内側、それを描きだす自然主義文学のもつ力とイプセンの魅力に驚かされました。

これだけの評価を受け、多くの作家に影響を与えているのにも納得です。

『野鴨』読んで何を思った?考察は?

テーマは人生における「理想」と「嘘」と「真実」

生活していく中で、多くの人は「嘘」の中に生きています。「嘘」が「真実」から守ってくれているのです。

嘘は人間に活力を与えます。ヤルマールが発明に没頭し、楽し気に生活するようになったのもある医者が、「君ならできる」とそそのかしたからでした。

しかし「嘘」の中で幸せに暮らしているヤルマールのところにグレーゲルスがやってきて、「理想」を振りかざして彼を「真実」のもとへ連れ出し、それが不幸を招くこととなりました。

野鴨はヤルマール(=平均的な人間)のメタファー

この作品の題にもなっている「野鴨」は、暗い納屋で生活しています。餌を与えられ太った野鴨は、本来の野生の生活を忘れています。

この野鴨は、外の世界、つまりその本来の居場所である野生の世界に出されたら、果たして生きていけるでしょうか。なかなかそうは思えません。

この姿は、ぼくたち一般的な人間のメタファーではないでしょうか。

つまり、ここでの納屋は「嘘」であり、外の世界・野生の世界が「真実。そして、野鴨がぼくたち人間です。

「真実」に激しくさらされることに耐ええない人間は、「嘘」という納屋を作って幸せに暮らしています。

そして「正義病」のグレーゲルスが「理想」でその納屋を壊してしまえば、人間はどうなってしまうのか。

ここにぼくはイプセンからのメッセージを感じました。

理想を誰かに押し付ける、つまり人口に膾炙するような教訓を描くのではなく、人間のありのままの姿を描く自然主義の魅力が詰まった作品に思えます。

おわりに

いかがでしたか。

135年も前の作品ですが、Twitter などでこの人間の「正義病」の部分を見ることがあるように感じます。

この作品を読んで、人間のありのままの姿を見つめてみることの面白さに触れることができたように感じます。

グローバル化やAIの発達などにより価値観が揺らぎ、未来が見えない今こそ、自然主義文学に触れると面白いのかもしれないと感じ始めた大学生でした。

皆様の感想も是非お聞かせくださいね!

シェアやコメントお待ちしております!それでは!

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