浅田次郎『おもかげ』あらすじ感想 これはきっと、あなた自身の物語

浅田次郎

みなさんお久しぶりです。

気が付けばもう7月も半ばですがいかがお過ごしでしょうか。

さて、きょう紹介するのはこちら!

浅田次郎『おもかげ』です!!!!!!!

毎日新聞で連載されていたこの作品。平成の泣かせ屋浅田次郎の新しい傑作です。

ひとことで言えば、定年退職の日に倒れたエリートサラリーマンが、生死の境をさまよいつつみる幻を通して自分の辛く厳しい過去を振り返り、ある決断を下す物語

生きる勇気が湧いてくる。そんな暖かい作品です。ハンカチ必須ですよ!!!

それでは早速参りましょう!

『おもかげ』の登場人物やあらすじ、内容は?

登場人物

主人公 竹脇正一

65歳になり定年退職。誕生日の翌日に開かれた送別会の帰り道、地下鉄で倒れます。

親がなく、孤児院育ち。今ではエリートサラリーマン。ハンサム。

自分の過去は、忘れて生きてきました。親がいないことも、我が子を幼くして亡くしてしまったことも。忘れなければ、生きていけない過去の持ち主。

運び込まれた病院で意識は戻らないまま。しかし本人は幻を見ます。

節子

正一の妻。正一の出自は知っているものの、詳しい話は聞かされていません。

節子自身も、複雑な家庭環境で育ちました。

永山徹

正一の幼なじみ。同じ施設で育ちました。大工さん。

徹だけが、正一の辛く苦しい過去のすべてを知っています。

茜と武志

茜が正一の娘です。武志はその夫。

不良でどうしようもなかった武志を引き取ってくれたのが師匠の徹です。

あらすじ

地下鉄で倒れた正一は、運び込まれた病院の集中治療室のベッドで幻を見ます。

はじめはマダム・ネージュと名乗る貴婦人とレストランへデートする幻。

次に入江静と呼ばれる白いサンドレスの女性と海辺を歩きます。

それから、となりのベッドで寝ているおじいさん、榊原勝男と銭湯へ。

そして勝男の初恋の女性峰子と地下鉄で出会い、今度は正一自身の初めての女性古賀文月と再会します。

それぞれとの会話を通して、正一は自分の心の中を理解し、過去を思い出していきます。

忘れなければ生きていけない」という記憶の中へ。

自分はもういつ死んでもいいのか、それともまだ死にたくないのか。かつて抱いた「普通の人になりたい」という夢は叶えたが、まだ不幸の分は取り戻せていないのではないか。

なかった過去にしなければまともに生きてこられなかったという正一の記憶、生きるために忘れなくてはいけなかった記憶を優しく、ときには厳しく掘り起こしてくれる幻の人々。

そして、最後の幻をみて、その正体と自身の重大な事実に気づいたとき、正一はどんな選択をするのか…

『おもかげ』感想

読めば勇気が湧いてくる。浅田次郎らしい、暖かい作品です。

はじめの20ページくらいから涙が止まりません。親子の愛情、かっこいい男、すてきな女性。どれも浅田次郎に書かせれば、ハンカチが手放せなくなってしまいます。

なんとなく、だれかに会いたくなる、そんな作品です。

『おもかげ』考察

あり得たかもしれないもう一つの人生

もしかすると、この作品、浅田次郎自身(あるいは読者も含めて)にありえたかもしれないもうひとつの人生を描いているのかもしれません。

この小説の主人公、竹脇正一は、1951年12月15日生まれ。

この小説の作者、浅田次郎は、1951年12月13日生まれ。

ほとんど一致しています。

孤児院で育った正一の生年月日が推測であること、さらに、舞台である2016年において定年退職の送別会を金曜日に設定しようとすれば15日生まれが自然なことから、二日のずれは許容してしまいましょう。

さらに、新聞配達をしながら大学受験をしたこと、アパレル業界で仕事をしていたことなど、浅田次郎自身の経歴と重なる部分も多くありました。なにより、地下鉄が大好きなのも共通しています。

「もし自分の人生が徹底的に不幸な身の上から始まったら、きっとこうなっていたのではないか。」

そんな想像を許してしまうような、不幸の標本として正一をもう一人の自分として描くことで、作者は自分自身の中身をさらけ出し、我々読者のこころの奥底を掘り返そうとしたのではないか。なんとなく、そんな気がします。

忘れてはいけないが、忘れなくては生きていけない。その間で逡巡しながら、多くの人が生きているのかもしれません。

今度地下鉄に乗ったとき、もしかしたら正一に出会うかもしれません。不幸な人生の標本であり、なんとなく、親しみを覚える彼に。

高身長で銀髪の似合う、ハンサムなおじ様が、席に座らず立っていたらそれが竹脇正一かもしれません。それとも、正一はあなた自身でしょうか。

おわりに

いかがでしたか。

なんだかふんわりとした紹介になってしまいましたが、ネタバレをしないようにしたらこうなってしまいました(笑)

親子の愛、夫婦の愛、親友同士の愛。浅田次郎ワールド全開、号泣必至の作品です。

忘れる、覚えておく。思い出す、しまっておく。そんな風にして、今となりに座っている見知らぬおじさんも、ぼく自身も生きてきたのかもしれません。

想像力と思いやりを駆使して、だれもが優しい気持ちで暮らしていられる世の中になればいいなあ。みんな、人間だしね。

今回はこの辺で。

シェアやコメントお待ちしております!それでは!

コメント

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