浅田次郎『獅子吼』内容感想考察まとめ『かわいそうなぞう』復活

小説

もういよいよ春ということで、朝寝を楽しみ午睡を貪らざるを得ませんね!

きょう紹介するのは、そんなぽわぽわ気分も吹き飛ぶ短編小説。

浅田次郎『獅子吼』です!!!

ひとことでいえば、戦時下、動物園に残された百獣の王ライオンの死に様を描く、矜持ある物語。いわば、浅田次郎版『かわいそうなぞう』といったところでしょうか。

それでは早速参りましょう!

『獅子吼』の登場人物やあらすじ、内容は?

登場人物

「私」/ボス

百獣の王、雄ライオンです。

草原に生まれ、父親から「決して瞋るな」「瞋りは死を招く」という王としての掟を教わります。

瞋りを押し殺して生きているうちに、「私」はそもそも瞋りという感情がどんなものだったかも忘れていきます。

その後人間に捕らえられ、動物園で展示されても決して人間に瞋りを見せることなく生活し、妻をめとり、子に恵まれて幸せに暮らしていました。

しかしその子らは成長するとどこかへ連れていかれてしまい、妻もそれを機に弱っていきます。

そして彼は、飼育員の召集により最愛の妻を失ってしまいます。ここが物語のスタートです。

「私」の妻である雌ライオンです。

動物園で生まれた彼女は草原を知りません。

自分の本来かくあるべき姿を知らない彼女。「私」は悲しく思います。

そして愛する子らとの別れが彼女を弱らせます。生きるよすがを失い、食事も満足にとれなくなった彼女。

そんな彼女のために肉を挽いて食べやすくし、なんとか生き延びさせてくれていたのが草野飼育員でした。

草野飼育員は、召集年齢が17歳に引き下げられたことを機に兵隊にとられます。そして雪の日、彼女は飢えて死んでしまうのでした。

草野二等兵

農学校を出ている兵隊。ライオンたちが暮らしていた動物園の飼育員でした。

貧しい農家で動物とともに育った彼は、奨学金をもらって農学校に通っていたため学生時代から動物園での仕事が与えられていました。

そのため彼は、動物のこころをよく解します。

人間が勝手に始めた戦争で動物たちが死ぬことはないと、彼は炊事場からこっそり残飯を盗み出し、山に暮らす動物たちのもとへ届けていました。

しかし、彼は上司にそれがばれてしまい、食べ物が届けられなくなったうえにライオンの「私」を射殺する旨の命令を受けます。

鹿内兵長

草野飼育員とともに射殺の任務に就く、農学校の先輩。

草野二等兵が任務を全うするのを監視する役割です。

先輩後輩であるということは知っていても、その任務で一緒になるまではほとんど草野二等兵との会話はありませんでした。

あらすじ、内容【ネタバレ注意】

いよいよ射殺の当日、「私」の聡い耳は草野二等兵と鹿内兵長の声を拾います。

彼らの会話から、自分が射殺されることを察した「私」は、自分を殺さなくてはならない彼らが涙を流していることに気づきます。

自分にボス(「私」)を殺すことはできない、腹いっぱいで死なせてやりたいから自分を食わせてやってくれと泣く草野二等兵に、鹿内兵長は厳しい声を浴びせます。

お前は貧乏なくせに背伸びをして学問などをするからこんな目に合うのだと。

しかし長く動物園で暮らす「私」だけは知っていました。

鹿内兵長も奨学生として入学し、飼育員として動物園に勤めていたことを。

鹿内兵長は草野二等兵に涙を見せぬよう努めながら、「猛獣狩りをしたい」と草野二等兵の代わりに自ら射殺を行うことを決めます。

それでもなかなか引き金を引けない兵長をみて、「私」は獅子の掟を破り、瞋ることを決めます。彼は愛する人間のために、瞋ります。

人間に向けて、その愚かしさについて「私」は吼えるのです。

瞋りは必ず相手に伝わり、それは呼応します。

獅子の掟を破ることが矜持を守ることだと信じて瞋るのでした。

吼えながら、はるか草原へと思いをはせるところで物語は終わります。

『獅子吼』の感想は?どうだった?

これを読んだその日も浅田次郎に泣かされました。

「かわいそうだから」泣くのではありません。

「かわいそう」に立ち向かうその背中に泣かされます。

知性を持つ人間として誇りをもって生きるとはどういうことなのか。そう考えるきっかけとなった作品です。

『獅子吼』読んで何を思った?考察は?

なんのために「私」は瞋ったのか

物語の最後に、「私」は瞋り、吼えます。

それは、人間たちに「戦争とはなにか」を教えるためではないでしょうか。

もちろん、自分のよく知る元飼育員に自分を射殺せしむるためというのもあるでしょうが、直前の台詞で、引き金を引けない鹿内兵長に「私」は心の中で言います。

なにをためらうのか。これは戦争じゃないか。
おたがい憎みもしていない相手に「敵」と名をつけて殺す戦争そのものではないか。
まさにいま戦争をしている人間がどうして私を殺すことをためらうのか。(要約)

鋭い爪や牙を持たぬ人間は、自分のからだより強い武器を作り出し、やがて戦争を始めました。

正当な理由のない殺し合いをしていることを伝えるために、百獣の勇者は命を懸けて瞋ったのではないでしょうか。

光る浅田次郎イズム

「かわいそう」「どうしようもない」といった理不尽に立ち向かう姿というのが浅田次郎作品を貫く大きなテーマであると強く思えてなりません。

ただ「かわいそうだから泣ける」のではなく、その運命に抗うものたちの姿に我々は胸を打たれるのではないでしょうか。

そして自身が自衛隊に所属していた経験を基礎にして描かれる彼の戦争物のお話は、

いつも戦争に対する強い反対の念と、当時を生きた人々への敬意が感じられるという点

に特徴を感じます。

『獅子吼』のおすすめ度は?

ずばりおすすめ度は…

4.0

4/5点です!!!

それでは内訳をみていきましょう!(評価基準はこちら https://tacksamycket.com/first-posting/)

価値観に影響、刺激をもたらしてくれるか

1点です。

動物という立場から人間を客観視して物語が進んでいきます。

そして、上の人間の勝手に始めた戦争がほかの動物たちや民間人に理不尽を強いていたこと、瞋りは呼応するという考え方にも大きな気づきがありました。

知識を与えてくれるか

ここは正直0です。

お話の性質上仕方ないですかね。軍の様子について知りたければ浅田次郎作品にももっと適当なもの(長編)が多くあります。

展開や構成が、読んでいて面白いものか

ここは迷わず1点です。

ぼくが読んで感じたのは『かわいそうなぞう』を下敷きにしているということです。

そしてそこに浅田次郎イズムが加わることで「かわいそう」で終わらず、それに立ち向かうという全く別の物語に変身しています。

そして瞋ってはならぬという獅子の掟も、イメージとは全く逆で面白いですね。

その本独自の新しさを持っているか

1点です。

上記と被りますが、『かわいそうなぞう』という、英語の教科書にもとられるほど多くの人が知っている作品を浅田次郎らしく描きなおすことに成功しています。

著者のほかの作品を読みたくなるか

1点です。

『獅子吼』は短編集に収録されているので、ほかの作品も読み放題ですね!!

おわりに

いかがでしたか。

平成の泣かせ屋、浅田次郎の筆により、そもそも泣けるお話がパワーアップしたように感じながら読みました。

それはもう、最後のページは涙でしわしわになることまちがいなしです(笑

平成もいよいよ終わらんとする今こそ、こういった小説をきっかけに戦争について考え、自分なりの価値観をもっていけたらと新元号発表を前に思っております!

ということできょうはここまで!

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コメント

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