どうもこんにちは。ついに新年度となり、学校の授業もいよいよ始まりました。
寒かったり暑かったりラジバンダリの日々ですが、みなさま体調はいかがでしょうか。
さて、きょう紹介するのはこちら!
蓮見圭一『水曜の朝、午前三時』です!!
バイト先の本屋で「平成のうちに読みたい」と紹介されていたので買ってみました。
舞台は大阪万博。ひとことでいえば、死を前にした女性がテープで残した、彼女のかつての叶わなかった恋についての物語。
「はいはい、病気で主人公がなくなるありきたりなストーリーね」と思って手に取りましたが、そんなことはありませんでした。
ただのラブストーリーという枠に収まりきるような小説ではありませんでした!!!
それでは早速参りましょう!
『水曜の朝、午前三時』の登場人物やあらすじ、内容は?
この作品は、「今」という時間でのお話とテープの内容を記した「過去」の時間二つに分かれます。大部分は過去の話であるので、その語り手である直子を主人公とします。
登場人物
主人公 直子
美人で賢い翻訳家で詩人。祖父が戦後に処理された旧家の出です。
許嫁とのけっこんを先延ばしにするために大阪万博のコンパニオンになります。そこでの半年間の恋を、病気で死を前にした彼女は娘の葉子にテープに残して伝えます。
臼井さん
直子が大阪万博期間中に出会い、恋に落ちるイケメン高学歴有能青年。
鳴海さん
直子の恋敵。フランス帰りのエリートで、直子とは似た者同士。
だからこそふたりは犬猿の仲。
僕、葉子
「今」の時間における主人公が「僕」です。直子の娘の葉子と結婚しました。ふたりは幼馴染。

あらすじ、内容
病気によって死が目前に迫った直子は、娘へのメッセージをテープに録音して残します。
直子のテープへの吹込みが、物語となります。
直子は、親に決められた許嫁との結婚を先延ばしにするために、大阪万博のコンパニオンとして半年間働き、大阪での一人暮らしをすることにします。
許嫁は「いいひと」ではありますが、同時に退屈な人にも思えて自由を得るために、直子はひとり暮らしを決めます。
そしてそこで働く高学歴高身長眼鏡男子の臼井さんと出会います。
許嫁がいるにもかかわらず、ふたりはデートを重ね、恋に落ちていきます。
しかしある日、けが人もださないようなほんの小さな交通事故を機に臼井さんは姿を消します。そのとき、車に同乗していたのは恋のライバル鳴海さんでした。
鳴海さんから真実を聞かされた直子の選択と、その後夫との結婚までの直子の人生が語られていきます。
ほかの選択をしていたらありえたかもしれない別の人生。あなたにはいくつありますか。
自身の恋を語ることで、直子は娘に何を伝えたかったのか。必見です。
『水曜の朝、午前三時』の感想は?どうだった?
思っていた以上に考えさせられる作品です。
読む前は、「病気で主人公死ぬ小説多いよなあ」くらいの気持ちで読み始めましたが、本当に失礼しました。
人生とはどういったものなのか、娘にどう生きてほしいのか。ただの恋愛小説ではなく、人生観にも影響しうる作品に思えます。
『水曜の朝、午前三時』読んで何を思った?考察は?
直子の「人生の練習」とはなにか
残された手紙に、直子は自分が「人生の練習」をしてきたと書き残します。
その「人生の練習」がどういうものだったのかを明かしていくように、物語が進んでいきます。
そしてこの「人生の練習」とはずばり、「選択の練習」ではないでしょうか。
作品の中に、キルケゴールの言葉が引用されます。
「人間は選択して決意した瞬間に飛躍する」
直子は、大阪での一人暮らしや許嫁との別れ、さらには臼井さんとの別れ、夫との結婚など多くの「選択」のシーンを葉子に伝えているように思います。
物語の終盤、直子が葉子に語り掛けるとき、なによりも内心の訴え、本能の訴えに耳を傾けろと伝えます。
夫のことは愛している直子ですが、「人生の練習」ももう終わろうとするときに、あの恋を思い出すのです。
「もしあのときああしていたら…」人生はそんな思いの連続であり、その選択を主体的にしていくためにはどうしたらいいのか。
自分がどうありたいのか、心のずっと奥の方からの衝動に注目すること。
それがこの本のテーマであり、直子からのメッセージであるように思えてなりません。
おわりに
いかがでしたか。
また大阪に万博がやってきます。
そのとき、ぼくはどんなドラマを自分が演じることになるのか楽しみでなりません。
万博を経験した後、それから結婚した後、もう一度読み返したい作品です。
そしてだれより、母に読んでみてほしい。その時母の口からどんなドラマが聞けるのか。そして僕にはそれを聞く勇気があるのか。
ぜひみなさんお読みになって、昔に想いを馳せるもよし、未来の生き方を考えるもよし、感想やコメントを聞かせてくださると喜びます。
それでは。春の宵、暗い部屋から更新。
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